その日は朝9時ごろから、梅雨の中休みの晴れ間を狙って、バイクで出かけることにした。 日曜日に予定していた田んぼをめぐるツアーの下見、そして信越トレイルのアクセス道路の状況確認をかねて、ほぼいちにちかけて、ようやく自宅に辿りつこうとするその瞬間に事件は起こった。
通称上木島ダムのブラインドコーナーを左へ曲がって左加速するぞと、アクセルをふかそうとした瞬間、1台の黒いワンボックスカーが、突然目の前に現れた。
とっさに衝突を回避しようとフルブレーキをかけた瞬間バイクは左へ大きく傾き私は地面に強く叩きつけられた。
瞬間、ヘルメットに守られた頭が強く地面に衝突してこすれるのはっきりと覚えていた。
瞬間にして天地逆さまになって引きずられる自分を認識をしてはいたが、なぜ転倒してしまったのか、そのほんの数秒間の経過についてはあまり思い出せない。
気づくと左肩に激しい痛みを覚え、ただうなっている自分。対向車を運転していた運転手の人がとっさに駆け寄り、ただひたすら「大丈夫ですか」「大丈夫ですか」と叫んでいる。
行きずりの車が何台か止まってこちらを見ているのを覚えている。
自分の怪我の程度はどの程度かわからずとりあえず警察を呼ぶことだけを考えていた。 しかしまずは自分の家族にこのことを伝えなくてはならない。しかし母ちゃんに電話をするも電話に出ない。
とっさに竹内家のハッチに電話をかけ至急現場に来てくれるよう頼む。
ポケットに入れていたスマホは無事だったのだ。
やがと警察がやってきて検分が行われる。 しかしこの時点で体を動かす事はほとんどできず、思った以上に重傷であることに気づき始め、事故から約50分経過した後に、自らの足で立ち上がって車に乗ることができないと判断し救急車を呼ぶことにした。 119にはかあちゃんが電話。
ほどなくして救急隊が到着。しかし自分の足でストレッチャーに乗ることも動くこともできない。
救急隊が慣れた手つきで担架に乗せて、私は生まれて初めて救急車の車内に収まることになった。
現場到着時間や車内搬入時間、出発時間、病院への到着予定時間細かなやりとりが無線で行われていた。
当の本人はというと、と次第に肩の痛み息苦しさが募り、えもいわれぬ苦しさに襲われていた。
カーテンがひかれた車内からは外の様子を伺い知ることができない。 しかし通い慣れた道ゆえ、ブレーキのタイミングやカーブのタイミングによってどこ走っているかは手に取るようにわかった。
しかしほんの少しの衝撃で肩と胸に激痛が走り、それはまちがいなく人生の中で味わったことがない苦痛だった。
スポンサーサイト
|