今から20年前、ユースホステルの1泊2食付き料金の上限は5040円、素泊まり料は3360円でした。
少なくともユースホステルは値段が安いことを売りにしてきました。
2010年頃になるといわゆる「ゲストハウス」が台頭してきて、1泊ドミトリ2500円前後が主流をなしていましたが、そもそも何故ユースホステルやゲストハウスがそのような安い値段でやっていけるのかというと、
1.高稼働率を維持することで面積当たりの売り上げが高く維持できる 2.タダ働きに依存できるヘルパー制度を活用できる
この2点に集約することができます。
額面的には少額のドミトリ宿の宿泊料金ですが、たとえば8畳の部屋に4人部屋を作って、満床になったとすれば、一部屋当たりの売り上げは1万円になります。
ベッドがあるだけの部屋がひと晩1万円を稼ぎ出すと考えれば、その高収益ぶりは目を見張るものがあります。 一定の稼働率が上がれば、東横インやルートインよりも利益率がイイということになります。
言い換えるならば、投下される資本費に対する売上比率がビジホチェーンを上回るということです。 もちろん、一定以上の稼働率があればというたとえ話です。
かつて日本一の高稼働率を誇っていた北日本のあるユースホステルは年間4400泊もの実績を上げていました。 推定される売上は2500万円にもなります。
すでに脱退しましたが、西日本のとあるユースホステルもまた大変な高稼働率を誇っていて、羽振りのイイオーナーは、東京で開かれたある年の研修会の2次会、3次会で何人もの同業ペアレントさんたちを引き連れては、新宿の飲み屋街で派手に飲み歩いていたことがあります。もちろん全て彼の奢り(^^)
青少年のために安く宿泊費を抑えて社会貢献するという大義名分の一方で、大変な富を築いた人もごく一部に存在していたわけです。
しかしドミトリ部屋が満床になるなどと言う現象はすでに遠い過去のものと化し、1泊2食5000円台ではとても収益を上げることはできません。 無給で働かせることのできるヘルパー制度も、少なくともユースホステルの世界では完全に禁止のお達しが出て、都道府県条例のもとで適正な賃金で雇い入れする必要があります。
「ユースホステルは安い値段を維持して社会貢献すべき」との意見もまだ一部で残りますが、利用者の大多数は中高年の昨今、安さによる社会貢献など、ほぼ意味をなしません。 「ユースホステルは単なる民宿ではない!」という人も多いのですが、少なくともこの考え方は「過去への憧憬」の域を出ていないようにも感じます。
すでにウチはユースホステルの会員、ビジター関係なく値段は一緒ですし、宿泊人数に関係なく一律1泊2食7800円。 コロナをきっかけにずいぶんとスタイルが変わりました。
古くからのユースホステラーの中には、ユースらしさがなくなったとお嘆きの方も少なくはないようです。 ですが、考えてもみればゲスト同士の交流は起きている間に行われるものであり、何も寝る場所まで他人と一緒である必要はないのです。
という訳で、そんな理由からウチはこれからも相部屋スタイルが復活することはありません。 ゲスト同士の語らいを維持しつつ、自由に物思いに耽る時間も旅先ではとても大切です。(経験上そう思う)
イイものをより安く、ではなく、イイものを適正な価格で。
アフターコロナの常識ですネ。
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